磨き屋の磨きとは

コンパウンドをつけて、車を磨く。
磨くという事自体は、色々な所で行われています。

自分でタオル等にコンパウンドをつけて磨く。
板金の仕上げで磨く。
中古車店などで汚れ落としや艶出しの為磨く。
ガソリンスタンドなどで、コーティングの下地処理として磨く。
当店の様な磨きの専門店で磨く。

などですね。プロはポリッシャーという道具を使い、回転するバフにコンパウンドをつけて磨きます。
ただ磨いて、ある程度の艶を出すだけならば簡単なんです。
しかし、正しい知識が無く磨くと、一見綺麗に見えますが、実はこんな事になっている事があります。

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この雲の様にモヤモヤとしたものは、「バフ目」と言って、コンパウンドの粒子で削った跡なんです。

コンパウンドで削るという事は、細かい傷を付けるという事。
塗装に合わせた最適なバフ、コンパウンド、磨き方。
そういった物が正しく無いと、一見綺麗になったように見えても、
太陽の下等で、この様に盛大なバフ目に悩まされる事となります。

板金屋、中古車店、そして副業でやっているコーティング店などは、
大抵工場の隅や、屋外で磨いたりしています。
その様な環境ではバフ目が見えにくいですし、
バフ目が出ないように磨く磨き方を知らない場合が多く、
バフ目はどうしても出る物。
出たバフ目はワックスやコーティングなどで埋めて一時的に見えなくすればよい。
などと考えているようです。

当店の様な専門店では、バフ目まで見える特殊な照明を使用し、
バフ目が見えなくなるよう、通常は2~3工程以上の研磨を行います。
最終的には人の目ではわからない程微細で不規則な傷とすることによって、
美しい艶を出していくのです。

しかし、磨く事という事には副作用もあります。
塗装の表面にあるクリア層。この厚さはサランラップ2枚分程しかありません。
いくら傷を消し、艶を出したとしても、むやみに削りすぎては、
もう二度と磨く事ができなくなるかもしれません。
また、塗装は表面近くが密度が高く、中に行く程組織が不安定になっています。
磨き過ぎてしまっては、かえって塗装の耐久性を落としてしまう事にも繋がるのです。

そこで当店は「マスタライズ研磨工法」を習得。
特殊なポリッシャーなどを使用。
傷の深さ以上の研磨を行いません。
また、通常数工程を必要とするバフ目消しの作業もほとんど必要ありません。
1~2工程でバフ目など一切残さずに美しく塗装を磨き上げます。

ちなみにこのお車は、新車から10年程経っているとの事。
まるで新車の様に磨きあがりました。

15年程前の話ですが、とても良い仕事をする板金屋さんとお付き合いしていました。
この板金屋さんの考えでは、磨かなくて良い状態で塗装を仕上げる。
磨くと余計な傷やバフ目が入ってしまうから。との事。
でもやはりどうしても磨かなければいけない時があります。
その時は、よく磨きのお仕事をいただいていた事を思い出します。
私達が磨くのを眺めながら
「やっぱり磨きは磨き屋さんにはかなわないなあ」
と言っていただいたのを思い出します。

それが磨き屋の磨きです。
そしてこの状態にしてからコーティングを施すからこそ、
しっかりと塗装に定着し、素晴らしい艶と耐久性が生まれるのです。

2012年10月31日